ロービジョンの集い2006

ロービジョンの集い
–見えない、見えにくい方のために–
と き:平成18年11月23日(祝、木曜日)13:00?16:00
ところ:広島大学医学部 広仁会館

morita shigeki san kouen

森田茂樹氏講演

プログラム
講演会
1. 講師:森田茂樹 氏
京都大学付属病院『低視力者に対する補助具の説明ボランティア』
「拡大読書器展示ルーム」オーナー
演題:「目の力を最大限に生かしてますか」

2. 講師:佐々木克行 氏 (広島市社会局障害福祉課 課長)
演題:視覚障害者福祉サービスについて(障害者自立支援法を中心に)

3. 講師:吉村 理 先生 (広島市身体障害者更生相談所 所長)
演題:広島市総合リハビリテーションセンターの紹介

ロービジョン補助具展示、使用指導

2006年報告
日本眼科医会の社会適応訓練講習会事業の一環として、平成16年に立ち上げた「ロービジョンの集い」を、本年度も、190余名の視覚障害者、行政、教育関係者、医療機関スタッフの参加をいただき開催いたしました。
昨年来、視覚障害者の方々から、「視覚障害者の社会適応のためには、医療と行政の連携が不可欠だと感じている」との声が寄せられたことを受け、今年は、行政の方にも講演をお願いしました。
冒頭に、公務の合間を縫って参加してくださった秋葉忠利市長が、障害者の福祉政策に関する意見、抱負を述べられ、さらに、H19年度に開設予定の広島市身体障害者リハビリテーションセンターには視覚障害者の要望を踏まえた設備を配慮すること、広島県眼科医会の視覚障害者支援の姿勢を評価しているという主旨のスピーチをされました。
講演会第1題目は、ご自身が視覚障害者でいらっしゃる京都市在住の森田茂樹氏に拡大読書器を駆使する技と心構えについて、お話をいただきました。
森田氏は、サラリーマンとして営業に携わっていた46才の時に網膜色素変性症による視力障害が生じて退職を余儀なくされました。突然訪れた視覚障害という晴天の霹靂に打ちのめされ、3年間暗いトンネル生活を送った後、拡大読書器と巡り会い、努力の末、晴眼者であった時と同じ早さでの読み書きの技術を習得されました。そして、ご自身の体験を糧に、私設『拡大読書器展示ルーム』を開き、同じハンディで苦しむ人々に情報提供を始められました。以後、近畿地方を中心に病院でロービジョン ケア外来を担当したり、全国の大学病院や眼科医療機関のスタッフを対象に精力的に講演活動をされています。
拡大読書器は同じ価格帯で同じタイプでも恐ろしい程その能力には差があり、今ある眼の能力を最大限に生かせるものもあれば、逆の場合もあるので、じっくりと真に自分に合った物を捜し当てることが重要であること、そして、何よりも楽にみえることを目標に読み書き能力を再獲得して欲しいとと力説されました。「視力0.1は完璧な視力!」と言われる氏は、両眼視力0.02、視野損失率100%という視機能で、パソコン・拡大読書器を駆使し、広く全国の方々と交流を深めておられ、今日に至るには長い道のりがあったと推測しますが、自然体で悠然としておられます。講演の締めくくりに、愛用の拡大読書器を用いて原稿用紙にすらすらと文章を書く様子をスクリーンに披露され、会場から感嘆の声が上がりました。

low vision kikitenji

補助具展示の様子

第2題目は、広島市の福祉行政を担当されている佐々木氏に障害者自立支援法について運用の概略を説明いただきました。
H18年4年に施行された同法は、10月に完全実施となり、各自治体で運用が始まりました。広島市域の対象者はH18年3月時点で37,000人弱、そのうち視覚障害者は約3,400人であり、その6割を65才以上の高齢者が占めています。障害者自立支援法による総合的な自立支援システムは、自立支援給付と地域生活支援事業の2つの柱で構成され、前者は国による規定、後者は各自治体の事情をもとに展開されるという仕組みになっています。障害程度区分の判定、勘案事項調査(地域生活、就労、日中活動、介護者、居住など)等のサービス支給決定までの流れや利用者負担について分かりやすい説明がありました。
第3題目では、更生相談所の吉村先生が広島市総合リハビリテーションセンター(略:リハセン)の概要を説明されました。
リハセンは、平成元年に中途障害者の社会復帰を目的に構想が始まり平成19年に開設に漕ぎ着けることになりました。施設は、1.総合相談、判定支援、2. リハビリ専門病院:脳障害を主とした回復期病床(100床)、3. 障害者支援施設:短期入所(60名)・通所・自立支援、の3部門からなり、西風新都の緑に包まれた広大な敷地にゆったりと建設されています。リハセンは、当初 脳血管障害にもとづく障害者を念頭に計画されたため、視覚障害等の他の障害者のサポート態勢はこれから整えてゆくことになるので、是非、要望や意見を寄せて欲しいと結ばれました。

第3回目となった今年は、本事業が県内の視覚障害者の方々に浸透し始めたという感触を得ました。視覚障害者リハビリの実際は歩行訓練士を始めとした専門家の手にゆだねることになりますが、この事業の現時点での意義は、行政に「ロービジョン」という言葉を認知して視覚障害者の社会適応に目を向けてもらうこと、そして、医療と行政が情報・認識を共有して視覚障害者の理解を深めることではないかと感じております。   今年は、県内全ての行政福祉課に加えて、障害者に密着した活動の場である各地域の社会福祉協議会(社協)にも案内状を配布してみましたところ、社協を通じて「ロービジョンの集い」の情報を得たという方が多かったので、今後も案内を続けてゆきたいと考えております。
最後に、ポスター・パンフレット・聴講申込葉書の作成と配布、行政福祉課・社協への依頼書類の送付などの事前準備、当日の会場運営、来場者の誘導などに貴重な時間を割いてご協力をいただきました広島大学眼科・広島県眼科医会会員の先生方と眼科医会賛助会員の皆様に深謝しいたします。
(文責 白根雅子)
参考資料:
講師:森田 茂樹氏についての資料1「あなたの目の力を最大限に!」資料2「拡大読書器(CCTV)について」もどうぞ。 場所 : 広仁(こうじん)会館 (広島市南区霞、大学病院内)。