ロービジョンの集い2005

ロービジョンの集い–見えない、見えにくい方のために–2005年
とき:平成17年11月6日(日)13:00-16:00
ところ:広島大学医学部 広仁会館(こうじんかいかん)

low vision tsudoi kikitenji

機器展示の会場

プログラム
講演会
講師:岩森 広明先生
(県立盲学校視覚障害教育相談支援センター 教育相談主任 )
演題:「盲学校のセンター的機能と教育相談」
ロービジョン補助具展示、使用指導

日本眼科医会の社会適応訓練講習会事業の一環として、昨年立ち上 げました「ロービジョンの集い」を、本年度も、約120名の視覚 障害者、教育関係者、医療機関スタッフの参加をいただき開催いたしま した。
今年は、県立盲学校の校医をされている井上暁二先生のご尽力によ り、盲学校の視覚障害教育相談支援センターで教育相談にあたっておら れる岩森広明先生にご講演をいただきました。
支援センターは、広島県立盲学校が「盲学校,ろう学校及び養護学 校のセンター的機能の充実事業」のモデル校として指定されたことを受 け、県と国の支援を得て平成15年度に設置されました。

講演会は、井上暁二先生の座長のもとに始まり、冒頭に戸田慎三郎 会長が開会の挨拶をされました。

iwamori sensei

岩森先生の講演

岩森先生のご講演は、盲学校の概要、支援センターのシステム・現 状と利用方法、視覚障害者の日常生活の工夫の紹介を骨子とした内容で した。
盲学校は幼稚部、小学部、中学部、高等部普通科・保健理療科、高 等部専攻科(理療科・保健理療科)で構成され、全ての年齢において普 通の学校教育に準じた教育を基本的に行い、その上に個々の障害に応じ た生活自立支援を弾力的におこなっている事、両眼視力が0.3以 下(おおむね)あるいは著しい視野狭窄等の高度の視機能障害を持つこ とが入学基準である事、などを説明されました。
支援センターの業務は, (1)地域の障害のある児童生徒等への指導と施設設備等の提供 (2)小中学校の視覚障害児を指導する教員への支援 (3)医療、福祉、労働の関係機関との連携 (4)視覚障害者へのカウンセリング が軸となっています。業務は,専門の教員があたり,盲学校の専門性や施設・設備を生かしたアドバイスや具体的な生活支援が行われています。   学校という特性から、児童生徒,保護者及び教育関係者の相談が多いのですが、福祉機関関係者や、中途視覚障害(成人)の相談も増加してるそうです。中途視覚障害者には、職業訓練の相談、日常生活指導を主に行っておられ、具体的には、単眼鏡・ルーペを使った読字、白状歩行、点字、コンピュータ使用の指導、使用文字の検討、拡大読書器、糸通し器などの日常生活用具の使用指導等が行われています。
より本格的な生活訓練の要請があれば、大阪、神戸などのライトハウスに紹介される場合もあります。
センター利用は、電話等による予約制で無料です。相談は全て個別に行われ、遠隔地等の事情により来校できない方には,出張相談も可能です。また、盲学校への入学を前提としないので、気軽に利用できる制度となっています。
視覚障害者リハビリテーションの専門施設がない広島県においては、盲学校を核とした相談・支援ネットワークの構築は、学童生徒のみならず、広く広島県の視覚障害者の相談窓口として、大いに頼りになる存在であり、今後の機能の更なる発展が期待されるところであります。
講演の終わりには、ユニバーサルデザインの日用生活用品について触れられ、シャンプーとリンスの容器、牛乳パック、ビール缶の識別、お札・コインの判別やバスカードの値段の識別方法、黒い杓文字と黒い茶碗の有用性などの具体的な事項を紹介されました。
岩森先生のご講演の後、事前に参加者からいただいていた病気に関する質問に対して皆本副会長が回答をしてくださり、好評を博しました。
講演会終了後、参加者一同が福祉器機展示会場へ移動し、和やかな雰囲気の中で、岩森先生・視能訓練士・眼科医が補助具の使用や病気の治療について個別の相談を受けました。

今回、ある視覚障害のグループの主宰者から、「法律、福祉制度が年々複雑かつ目まぐるしく変化し、個人の努力では福祉サービスの利用についての情報収集が困難になってきたので、広島県眼科医会に協力をして欲しい」という要望がありました。視覚障害者の方々の切実な思いであると受け止めております。
今年は、県内の全ての行政福祉課に、視覚障害者への関心と理解をさらに深めていただきたいという気持ちを込めて、事前に電話連絡の上、ポスターとチラシを配布いたしましたが、来年度以降も行政との連携を深める努力を続け、ロービジョンの方々に、より具体的で迅速な情報を提供できる様に工夫を重ねてゆきたいと考えております。

最後になりましたが、ポスター・パンフレット・聴講申込葉書の作成と配布、行政福祉課への依頼書類の送付などの事前準備、当日の会場運営、来場者の誘導などに貴重な時間を割いてご協力をいただきました広島大学眼科・広島県眼科医会会員の先生方と眼科医会賛助会員の皆様に心より感謝申し上げます。