目の健康講座2008

目の健康講座 -清明な視力のために-
と き:平成20年6月8日(日)13:00
ところ:広島国際会議場
プログラム
1.講演(ダリア)
糖尿病と眼の病気 尾道総合病院眼科部長 松山 茂生 先生

ドライアイと角膜疾患 山口大学医学部眼科教授 西田 輝夫 先生

2.目の健康相談(ダリア)
座長 広島大学視覚病態学教授
木内 良明 先生
同時開催
ロービジョンの方のための福祉機器展示・相談(ラン)
(12:00~16:00)
ひろしまドナーバンクパネル展示と登録受付(ラン)
(12:00~16:00)

koza 2008 kanban

目の健康講座入り口看板

広島県眼科医会では、平成9年より毎年、対社会的事業の一環として、一般市民を対象とした公開講座である「目の健康講座」を開催しています。第12回目の今回も広島大学視覚病態学との共催で、平成20年6月8日(日)上記プログラムで行いました。会場は例年広仁会館でしたが、今回は都合により広島国際会議場となりました。また、例年25分の講演が2題、45分の講演が1題の計3題でしたが、今回は50分の講演2題に変更して、それぞれの講師の先生にじっくり話していただきました。
開催の告知は、会員の先生方の医療機関および関係機関へお配りしたポスターとチラシ、中国新聞のエスパス欄での開催案内で行いました。はがき、FAXでの聴講申し込みは241人で、平成19年度の239人とほぼ同様でした。定員は250人で、開催当日は165人が聴講されました。平成19年度の145名よりやや増加しました。 講演会は山代浩人副会長の司会進行で行なわれました。まず戸田慎三郎会長が開会の挨拶をされ、その中で参加された方々にひろしまドナーバンクへの募金をお願いされました。

matsuyama sensei kouen

松山茂生先生講演

1題目の講演は松山茂生先生の「糖尿病と眼の病気」でした。最初に、糖尿病の歴史を話され、糖尿病が古代エジプトの時代から認識されていた疾患であると述べられました。つぎに、糖代謝、インスリンの役割、糖尿病の原因を解説され、高血糖により血管障害が生じ、その結果さまざまな合併症が引き起こされると話されました。現在、本邦では約740万人が糖尿病に罹患しているとされ、糖尿病患者の約40%の約300万人の方が網膜症を発症し、そのうち150万人は病院に通院せず、毎年3,000人〜4,000人が失明している現状を強調されました。本邦の2006年の統計では失明原因の第1位が緑内障、第2位が糖尿病網膜症、第3位が網膜色素変性症で、糖尿病網膜症で失明する方は働き盛りの方に多いと話されました。糖尿病の3大合併症である神経症、腎症について簡単に触れられた後、糖尿病網膜症について詳細に説明されました。糖尿病網膜症の所見を多数の眼底写真、蛍光眼底写真でわかりやすく説明されました。糖尿病網膜症を単純網膜症、前増殖網膜症、増殖網膜症に分類して、それぞれに時期における症状、治療法について解説されました。単純網膜症の時期は、内科的治療が重要で、眼科では定期的な眼底検査が重要であり、前増殖網膜症の時期は増殖期への進行を防ぐためにレーザー治療が非常に重要で、増殖期になると放置すれば牽引性網膜剥離、血管新生緑内障などが原因で失明へと繋がるため、レーザー治療、硝子体手術、緑内障手術などの濃厚な治療が必要となり、治療してもかなりの視機能障害が残ると説明されました。網膜症の悪化因子として、糖尿病罹病期間、血糖コントロール、高血圧があり、血統コントロール、高血圧は治療可能なので、この2つをしっかり治療することで網膜症の悪化を予防することが大切であると話されました。糖尿病網膜症は患者と内科医と眼科医が協力して治療していく必要があるのに、情報交換が不十分になりがちなので、日本糖尿病眼学会が発行している糖尿病眼手帳を使って情報を共有して治療していくことが網膜症の悪化を防止する有効な手段の一つであると話されました。糖尿病になっていないかどうか、1年に1回は内科で健診を受け、糖尿病になってしまったら定期的に眼科に受診することが大切であると結ばれました。

nishida sensei kouen

西田輝夫先生講演

次いで、山口大学医学部眼科教授の西田輝夫先生に「ドライアイと角膜疾患」と題してご講演いただきました。まず初めに、「地球上のすべての動物は元々海の中に住んでいて、体表面は海水で湿潤に保たれていましたが、進化の過程で陸上へ上がってきたという歴史があり、陸上での生存は乾燥との闘いの歴史でもありました。海水の中にいたときは眼表面が乾燥するということありませんでしたが、陸上では眼の表面が乾燥し、乾燥が強い場合はドライアイとなり、私たちを苦しめ、特に、近年は、エアコンが普及しドライアイになる可能性が高くなってきています。」と生物の進化とドライアイの関係について話されました。つぎに、涙の役割として、角膜表面を湿潤に保つことによる角膜の透明性の維持、涙液中に含まれるさまざまな因子による表面の感染防御、眼瞼の動きを円滑にする潤滑油、角膜への栄養補給、眼表眼の老廃物、異物の排除など多岐にわたると説明されました。涙は3層構造で、油層、水層、ムチン層からなっていて、油層はマイボーム腺から、水層は涙腺から、ムチン層は杯細胞から分泌され、それぞれの層に異常があってもドライアイになり、ドライアイは症候群であり、さまざまな原因があり、それぞれの原因に応じた治療が必要となると説明されました。マイボーム腺機能不全による油層の異常、リウマチ、シェーグレン症候群、知覚神経の異常などによる水層の異常、Stevens-Johnson症候群、コンタクトレンズ、VDT作業、エアコンなどが数え上げればきりがないほどドライアイの原因があると説明されました。ドライアイは、自覚症状および他覚所見としての涙の量、涙の質的変化、角結膜の異常にから診断され、自覚症状として、乾燥感、異物感、不快感、眼痛、充血、かすみなどさまざまで特徴的な症状はないと話されました。涙の量的異常の場合の治療として、人工涙液、ヒアルロン酸、コンドロイチン、眼軟膏、涙点プラグなどの局所治療と、全身に異常がないかどうかを検査する必要があると話されました。涙の質的異常の場合、マイボーム腺の温庵療法、眼瞼清拭、抗生物質などが有効であると話されました。最後に、角膜と涙について長い間研究してきたが、結局解らないことが多く、若い方の更なる研究が望まれると結ばれました。

引き続いて「目の健康相談」が行われました。前年と同様に会場内で配布した質問用紙を休憩時間に回収し、理事の先生方に整理して頂いた質問事項に加え、聴講申し込みの際に添えられた質問もあわせて、講師の先生にパネルディスカッション形式で答えて頂く方法で行いました。広島大学視覚病態学教授の木内良明先生に座長として健康相談を進行していただきました。寄せられた多数の質問事項を各講師の先生方に丁寧に回答していただきました。聴講者の皆さんは終わりまで熱心に聞いておられました。最後に白根雅子副会長の挨拶で無事終了しました。  また、ロービジョンの方のための福祉機器展示・相談、ドナーバンクパネル展示と登録受付を講演会場のダリアの間から少し離れたランの間で行いました。昨年と同様5名の視能訓練士に、展示されたルーペ、単眼鏡、拡大読書器などを見学者に実際に試して頂きながら、使用方法の説明をして頂きました。  参加された方へ今回の「目の健康講座」についてのアンケートをお願いしたところ、90名から回答をいただきました。94%の方は「講演は理解できた」、82%の方は「講演時間は適当であった」、93%の方は「今後も「目の健康講座」の開催を希望する」と好意的な回答でした。次回の「目の健康講座」は平成21年6月7日(日)広仁会館で予定しています。  最後に、例年同様多大なご協力を賜りました広島大学眼科学教室、ひろしまドナーバンク、目を守る企業グループの皆様方には厚くお礼申し上げます。
(公衆衛生 溝手秀秋)